Death & Honey

死と蜜、儚く甘く気だるい魔法

”鐘の音”

そうね

切り離して

人生とそれ以外を

 

視野には入らない笑顔がたくさんあって

人混みの出す騒音にかき消された笑い声がたくさんあって

雪の下には気づかないまま通り過ぎてしまった奇跡がいくつもあって

 

世俗に別れを告げる鐘の音が聞こえます

軽く明るく

飄々と

行く人もあり

逝く人もあり

生く人もあり

 

 

"あなたの名前をつぶやくたびに"

あなたの名前をつぶやくたびにぽろりとこぼれるものがある

なんて素敵なことでしょう

それはもう魔法みたいに

空気弾んで

風船喜んで

 

眠りにつく前

ほんの少しだけ小さく声に出して君の名前を呼んでみる

呼ぶって不思議

届きやしないのに

どんな大声で呼んだって叫んだって

きっと

届きやしないのに

 

でも呼んでみると、少し素敵で

少し幸せになる

 

あなたの名前をつぶやくたびにぽろりとこぼれるものがある

それは魔法

それは呪文

人生のかたちを変えていく甘い甘い呪い

誰にも言わないから、この秘密だけはどうか許してよ、神様

 

 

”水晶越しに”

もう許されはしないぞ

苦しみの他には

 

もう後はないぞ

苦しみの他には

 

痛みの宮殿で

水晶越しに見る別世界

それは綺麗な綺麗な世界

私のいない新世界

 

もう戻れはしないぞ

私は罪人

生れながらの罪人

 

 

 

”黒いパンタグラフ”

仮面遊戯

振る舞う汎社会性

強行採決セレモニィ

 

そして飛び散るー

燦々と

 

やがて日は暮れ

プラットホームで

ぼーっとしたりなんかして

瞬間

嘲る

この感情を

 

仮面たちを

また取り戻して

気を取り直して

次の電車に乗ろう

 

冷たく黒いパンタグラフ

 

 

 

 

 

 

 

”光速”

閃死のフラッシュ

ドットの青春が分解

悶喜のクラッシュ

急カーブで冷や汗

選択の余地

光速

同時に拘束

気づかないまま

ハンドルを握る

潤滑油を刺されていたのはマシンじゃなく僕

選択の予知

しがみつくのは

親と先祖と神様と宿題

愛想笑い

致命的な癒し

有史以降のプロジェクト

 

ハンドルを握って

遺伝子

複製

廻ってるだけなのか

廻ってただけなのか

しがみつくのは

子供と子供と子供と遺伝子

 

儀式(セレモニー)を破棄

耐望のクラッシュ

原惑のフラッシュ

突然の中断

つまり僕の死

 

 

 

 

”Y字路に立って”

右手には煙草のにおいが染みついて

脳にはさっき吸った煙が充満している

男は立ち止まる

ぼんやり考える

蒙昧とした視界

Y字路の向こう

駱駝色のコートに包まれた躰にゆっくり静電気が溜まる

 

遠く

山の向こうに毛むくじゃらの巨人を見た

悲しい歌を歌っていたそれはこのY字路の先

 

彼は随分長い間ぼんやり考えている

また新しい煙草

一つの火

二つの道

煙に目を細め

新しい考え

古い価値観

今まで撃った銃弾の数 傷つけた人達

振り返ると

煙と共に消えた

彼はゼロ

ナッシング

 

どちらの道を選んでも誰も彼を責めはしない

どちらの道を選んでも巨人の悲しい歌声は聞こえる

 

 

 

 

”金魚鉢の中の二人”

「それ以上は聞かないで」

込められた断絶の意

言えない金魚鉢の秘密

抱えたままのあなた

今にも向こうの出窓くぐって

飛び降りそう

 

これ以上踏み込めない

もっと知りたいのに

もっと聞きたいのに

その紅い唇からささやき漏れた言葉

 

「それ以上は聞かないで」

 

優しさ?

でも硬い硬い優しさ⋯

 

一瞬

喉の奥が強く揺さぶられ、脳が鈍く殴られて

苦しさが手足を伝っていく

息ができない

呼吸を取り戻さなきゃ

 

ああ

息の仕方を忘れてしまった

愛の仕方を忘れてしまった

 

水は冷たく厳しい 金魚鉢の中