Death & Honey

死と蜜、儚く甘く気だるい魔法

”霧の運河にて”

本当に恋しい時に会いたい人が運命の人だから

君じゃないね

寂しい時じゃなく

穴を埋めるのではなく

 

永遠という嘘で遊んでるのさ

揺らぐ気持ちの中で

不安のボートに乗り

船頭は私に優しく語りかけた

運河は霧深く

私は船頭が何を言っていたかもう思い出せないでいる

 

悲しいよ

悲しいよ

お薬を飲んで

お薬を飲んで

今日が行き過ぎる

ただただ行き、過ぎる

 

全部夢というオチはない

船頭が何を言っていたのか思い出せない

会いたい時に恋しい人はいない

会いたい時に

会いたい時に

 

 

 

”頭の中、空白で圧迫”

枯れた葉を踏む

消えた摩擦に問う

信じた儀礼を蔑む

ないがしろにした約束を思い出す

 

連れ添った無限は錯覚

頭の中、空白で圧迫

やがてそれに満たされ

いずれ歳をとり

朽ち果てるのだろう

 

細長い彫像はあなた

枯れた木の枝でほほを弾く

 

今日の帰りもまた枯れ葉を踏む

頭の中は空白で圧迫されていく

 

 

”無限のエンドロール”

寄り添えど

足並みは合わず

わざとかなって勘ぐりもしたし

色々捨ててきた

予防線張っても

死ぬだけだった

 

そこかしらにヒントは張り巡らされ

人生の伏線を回収

君のストーリーに私は登場しないんだね

 

ねえ、待ってよ

牙はもう無いし

この身体は洗浄装置で清めたよ

 

そのはずなのに

霧が深くて

君の顔が見えない

足跡すら追えない

 

暗く白い森の中

橙色に堆積した腐葉土に膝をつき

今まさに死にゆくところさ

あー、バイバイ。

 

(そして流れる無限のエンドロール)

 

 

 

”心意気を讃えよう”

空振りの中の

心意気を讃えよう

宙を切って死んだ

蠅のように死んだ

 

大酒呑みの山の民はぐうぐうといびきをたてている

その夢の中で

結婚式があった

人間と北極狐の結婚式

 

やあ、めでたい

やれ、めでたい

寝言は私の家にまで届いてきた

 

 

 

”滞留する蒼”

届きません

声も、言葉も、視線も、手も

ほんのささやかなものを待っています

 

なので夜は少し泣いたり

お酒を飲んで電話をかけて、からかうかもしれません

ごめんね

 

感じていたより距離は近く

でも見た目より心は遠い

 

さめざめと言葉を投げては

心が折れ

また塞ぎ込んでしまいます

若さとは「何回折れたか」であり

「何回生まれ変わったか」なのです

 

蒼いうちが華

 

 

 

”夜になぐさめられてしまう前に”

ちょうだい

もっとちょうだい

 

返事が見つからない

涙は溢れるのに

何も言葉にならない

夜は不思議

私は包まれ、なぐさめられてしまう

 

足りなさを引きずって浪費

病みは癒えぬまま行為

 

秘密は秘密のまま

誰にも言えないことばかりが

この身体の輪郭の内側を埋めていく

 

教えて

もっと教えて

夜になぐさめられてしまう前に

 

 

 

”断層”

もうズレて

力抜けてくだけで

断層

誘惑に近いだけの血と肉

 

揺れる灯籠

魂を映したゆらぎ

白い衣も黒い衣も

皆血で染まる

どうせ皆夜明けには消える

 

新しい朝は

君の名前を思い出せないだろう

その笑顔も

やがて消えていくだろう