Death & Honey

死と蜜、儚く甘く気だるい魔法

”かりそめの恋心”

さようなら!かりそめの恋心よ! 僕は崖から飛び降りるだろう そんな夢を見るだろう 泡のような夢を見るだろう くだらない夢を見るだろう 少ない言葉と 少ない色と 少ない線だけの 額に入った 君を好きになった 泡のように消えるだろう 崖から飛び降りるだろ…

”神聖なる禁猟区”

ここは禁猟区 神聖なる領域 誰にも穢されることはない 醜さも、美しさも紙一重 奇跡は太陽に近く 後悔は月に優しく添い遂げる どこからか穏やかな風が吹き 狩人は世界を支配する空砲を放つ ひしめき合う薔薇が生き辛い人たちを守り 存在の理由なんて忘れさせ…

”冷たい瞳は誰のもの?”

軋み 放つ 白んだ嘘の切れ味に酔いしれな 壁は灰色 石の沈黙 弦のたわみ そのきらめき 響き 風邪ひいちゃったかな 声がザラザラ 冷たい瞳は何も語らない 何も語らない 何も見ていないのだから当然 足を投げ出し壁にもたれてかかっている置き人形 ハハ 厳しい…

”一瞬”

愛したのは一瞬で 憎んだのは一瞬で 殺したのは一瞬 息を止めて 目は開けたまま その人は頷いた こびりつく錆のような 友情に 愛情に 思いやりに 嫌気が差して 最後はエナメルの息一つ

”鐘の音”

そうね 切り離して 人生とそれ以外を 視野には入らない笑顔がたくさんあって 人混みの出す騒音にかき消された笑い声がたくさんあって 雪の下には気づかないまま通り過ぎてしまった奇跡がいくつもあって 世俗に別れを告げる鐘の音が聞こえます 軽く明るく 飄…

"あなたの名前をつぶやくたびに"

あなたの名前をつぶやくたびにぽろりとこぼれるものがある なんて素敵なことでしょう それはもう魔法みたいに 空気弾んで 風船喜んで 眠りにつく前 ほんの少しだけ小さく声に出して君の名前を呼んでみる 呼ぶって不思議 届きやしないのに どんな大声で呼んだ…

”水晶越しに”

もう許されはしないぞ 苦しみの他には もう後はないぞ 苦しみの他には 痛みの宮殿で 水晶越しに見る別世界 それは綺麗な綺麗な世界 私のいない新世界 もう戻れはしないぞ 私は罪人 生れながらの罪人

”黒いパンタグラフ”

仮面遊戯 振る舞う汎社会性 強行採決セレモニィ そして飛び散るー 光 燦々と やがて日は暮れ プラットホームで ぼーっとしたりなんかして 瞬間 嘲る この感情を 仮面たちを また取り戻して 気を取り直して 次の電車に乗ろう 冷たく黒いパンタグラフ

”光速”

閃死のフラッシュ ドットの青春が分解 悶喜のクラッシュ 急カーブで冷や汗 選択の余地 光速 同時に拘束 気づかないまま ハンドルを握る 潤滑油を刺されていたのはマシンじゃなく僕 選択の予知 しがみつくのは 親と先祖と神様と宿題 愛想笑い 致命的な癒し 有…

”Y字路に立って”

右手には煙草のにおいが染みついて 脳にはさっき吸った煙が充満している 男は立ち止まる ぼんやり考える 蒙昧とした視界 Y字路の向こう 駱駝色のコートに包まれた躰にゆっくり静電気が溜まる 遠く 山の向こうに毛むくじゃらの巨人を見た 悲しい歌を歌ってい…

”金魚鉢の中の二人”

「それ以上は聞かないで」 込められた断絶の意 言えない金魚鉢の秘密 抱えたままのあなた 今にも向こうの出窓くぐって 飛び降りそう これ以上踏み込めない もっと知りたいのに もっと聞きたいのに その紅い唇からささやき漏れた言葉 「それ以上は聞かないで…

”極北のトルソー”

時間の隙間 呼吸の間隔 喪失を告げる極北のトルソー 空回ったっていいよ 見届けてあげるから 氷づけの人生 かすかな摩擦 予感 未完成な生 暗闇の中 必死に掴もうとしている 空回ったっていいよ 見届けてあげるから キスは罠 甘美な毒

”脱皮”

朝焼けが海沿いの道のアスファルトに作ったこのやせ細った影 頼りなく、危うく 冴えない色をした車たちが長い間隔をあけて車道を西へ東へ どこまでも続いているように見え いつだって引きずってるよ 昨日の続きを 去年の続きを あの日の続きを あの瞬間の続…

”ねむけ”

眠気は理路整然 目を閉じながら 陽炎 都合の良い昨日の言葉は 明日には通用しない 真夜中の境界線上 木造の船が静脈を突き進む

”ある画家の証”

記録されていた 生きた証は 白いスケッチブックに鉛筆で 定着された黒鉛の線 その線の佇まいが放つ生命力の ああ、なんともか細くも力強い放出 眩しいほどでもなく 暗くて見えないほどでもなく しかし確実に「俺はここに居たんだぞ」と 何冊にも及ぶスケッチ…

”影と陰を”

全てを満遍なく照らす必要はない 程よく影と陰を

"生まれて一番の夏"

水を蹴って 寝袋 ジャズドラム 17の 生まれて一番の夏は 天の河を見つめながら 安いビールに手を出したりして その苦さが喉に焼きつく ねえ、「おいで」って言ってよ すぐに飛んでくから 僕は君のお誘い待ちさ 白いウミネコの群れ 夏期講習の帰りのけだるい…

”白い馬と走る”

白い馬の胴を撫でた かたくも滑らかな毛 奥で筋肉や血管や心臓がうごめいている そんな気配を感じる 生きているということはこんなにも不気味で、不思議なのか 私は鞍にまたがり 小一時間、コースを走った (これはわたしがはしっているのとおなじ⋯) そう、お…

”銀河中が”

温もりを そっと ゆっくりと 熱交換でしかないのに 不思議だな 錯覚して 眠りへ落ちてく 夜がキラキラと泣いているよ 相手をしてあげて 星たちがたくさん 列を作ってあなたの話を待っている 銀河中があなたの話を待っている 銀河中が期待してる

”今夜は構わない”

傷つきやすいので 守ってください と 言えたらなあ ときどき、一番奥の自分が顔を出すよ 一番奥の一番傷つきやすい自分 ときどき、ピキピキ、冬の夜風にさらされたりして そんな時は踊ることにしている 一緒に踊りましょう コンビニで素敵っぽいお酒を買った…

“交差点”

白と黒のストライプが 交わって それぞれの方向へ 何かを指し示しているようで 実はとてもおおまかでしかない信号たち ぬめぬめと ひとひとと まとわりついて 離れない 淡い陰謀のような この世界で生きていくためのルール 気持ちいいのか 気持ち悪いのか そ…

”おやすみの断片”

威張り散らした天上のパイプオルガン 気まぐれなシャボン玉の生命 どうやったって返ってこない手紙の返事 誰も乗せていないのに回り続けるメリーゴーランド そんな景色 もう忘れてしまったよ こうやって思い出のように話しかけているけれど 戻らないものがあ…

”優しさについて”

優しさについては書けない 包まれて初めて気づくもの 生まれて初めてわかるものについては 真冬の誠実な毛布や 春の青黒く遠い海原や くたびれて黄ばんだ絵本の中にあるような 優しさについては 到底書けっこない 今日生まれた 今日死んだ 灰になった 嘘みた…

”あまのじゃくブラックホール”

朝はいつもまぶしいけれど、 目が開けられない 日付が変わる頃、 私はやっと覚醒する 毎日同じ友人と会い、 同じ宿題をして、 同じ海の中 私の背中にはフジツボが生え始めた ☆なんだかなぁ 途方に暮れる 左胸に ぽっかり開いた ブラックホール 気づいてるけ…

”どうかジョーカーを引かないようにね”

あの世のことなんてなんにも知らない ケーキの上、溶けて崩れる素敵なストーリィ 逆算して生きてく どうかジョーカーを引かないようにね でもね これは 嘘じゃないよ 23歳で覚えた合言葉さ

”言葉摘み”

飛び込んで 蒼い言葉の湖 潜る 深く深く どこまでいけるのか 紫の珊瑚、知らんぷりしている岩、「無」を縞模様にしたためた魚たち かき分けて かき分けて あんな言葉 こんな言葉 見たことのないような言葉まで 触ったことのない言葉まで こわごわ たくさん …

”在る”

吸い込んで 吐く 続くことだらけ 終わることといえば 今日という一日か 揺れて 流れて 拡大して 縮小する 自分を固定しなくなってから とても安心できる とても不安になる 大きさも形も色も 自由自在 私は光りたい 砕かれたガラスの粒 その一つ一つ 不安は言…

”混沌を選べ”

静寂に包まれ 混沌を選べ 轟音に耐えられない哺乳類たちは そこで息絶えた 大きな骸たちが灰色の浅い沼地にどっしりと横たわっている 静寂に包まれ 混沌を選べ 轟音の壁に絶望させてよ 色のついた夢を見せておくれよ 骸たちの上 スキップして超えて 沼地の向…

”なんて喜劇的な涙”

いやはや インプット過多 さてさて アウトプット過多 こんな調子だから 雲上にある白金のピアノを調律して あなたは 「愛してる」 そのメロディを奏でる ああ、なんて茶番 こんな調子だから 街行く私はドロドロバスや にがにが電車に詰められて 車掌の合図と…

”沈鬱のディナー”

分解 骨組み 欠片 空間 何も 知らない 何も 言わない 沈鬱のディナー 神様 走る 騒ぐ 光る 血が出る 時代の兆候は 君の額の真ん中の風穴 何を信じようが 何を壊そうが 知ったこっちゃ無い 歪んだ 僕は 優しさを忘れて 殴られた 分解 脳 血 潜る 君は 悪魔 僕…