Death & Honey

死と蜜、儚く甘く気だるい魔法

“そこにあるコーヒーとここにいることの証明”  

「存在するために生きているのです」とあの人は言ったね

あの時

どう返事すればよかったのか

私にはわからなかった

まだ幼かったのかもしれない

若すぎたのかもしれない

臨海工業地帯を望む防波堤の根っこであの人は車を停めた

 

そんなムードが

全てを鈍くした

 

今、こうやって苦く熱いコーヒーを飲みながら思うことは、肌の下にあった熱

それだけ

若さの証

 

誰に証明しよう?

「私はここにいる」と

 

あの人はもういない

誰が教えてくれるの?

「私はここにいる」と

 

白い壁

白いカーテン

その向こうの活き活きとした新緑の五月の街

 

私は一人ここにいる

窓を開けて叫んでやろうか

一瞬魔が差した

しかしじっとしたまま

コーヒーにまた口を近づける