Death & Honey

死と蜜、儚く甘く気だるい魔法

“強情な足跡”  

半透明の身体を引きずって

いまだ自分の名前を思い出せないまま

蒼い天蓋の下

黒い海の浜辺を歩く

欠けた貝殻はいにしえの若者の青春

座礁したボートから聞こえる調子外れの舟歌

愛情も憎しみも

何も区別がつかなかったあの頃へと戻らせようとする

 

足跡を残さずに歩こうとしたけれど

無理だった

何かが私に干渉している

私が何かに干渉している

ざらざらしたものが踵にまとわりつく

どうせなら

透明なまま死にたい

今日の足跡は強情で

消そうとしてもなかなか消えなかった

私の過去をふてぶてしく主張しながら

波打ち際に堂々と残っている