Death & Honey

死と蜜、儚く甘く気だるい魔法

”Y字路に立って”

右手には煙草のにおいが染みついて

脳にはさっき吸った煙が充満している

男は立ち止まる

ぼんやり考える

蒙昧とした視界

Y字路の向こう

駱駝色のコートに包まれた躰にゆっくり静電気が溜まる

 

遠く

山の向こうに毛むくじゃらの巨人を見た

悲しい歌を歌っていたそれはこのY字路の先

 

彼は随分長い間ぼんやり考えている

また新しい煙草

一つの火

二つの道

煙に目を細め

新しい考え

古い価値観

今まで撃った銃弾の数 傷つけた人達

振り返ると

煙と共に消えた

彼はゼロ

ナッシング

 

どちらの道を選んでも誰も彼を責めはしない

どちらの道を選んでも巨人の悲しい歌声は聞こえる