Death & Honey

死と蜜、儚く甘く気だるい魔法

”跡”

狂ってしまえと

開いた掌には花びら

桃色した花びら

すぐに消えて無くなった

風に溶けて

夕闇に馴染んで

 

この傷もやがては癒え

跡も消え

明るい表情をとり繕ったりするのだろう

 

リリリ

リリリ

 

今日もいい天気で

街はもう狂っている

そこかしらが爛れ

麻痺し

膿と血でもって

通りすがる人々の心に闇と病みとを与えていく

それを見続けた駅前公園の銅像

涙を流し続け

誰にも気づかれないうちに

敏感な行政の処分によって撤去されることになった

跡には何も残らない

 

通りすがりの人々は

どうして自分の心はこんなに荒んでいるのか

ささくれ立っているのかと疑問に思いながら

電車の中で厳しく目を閉じ

必死に人間という形をとどめている

 

嗚呼、なんとつまらない形だろう!

人間という入れ物の形は

あの銅像も人間の形を模していた

 

いずれは皆撤去されるのだ

誰も気づかず

悲しまず

 

サササ

サササ