Death & Honey

死と蜜、儚く甘く気だるい魔法

2016-08-01から1ヶ月間の記事一覧

”やさしい毒”

吸って 吐いて 生きる 高く やさしい毒 酸素にだって毒性があるらしい 愛情や憐れみにだってあるのかもしれない そのドアの裏は 見たことのない色をしていた その空の裏は 見たことのない色をしていた

”からまり”

ほどけないからまり 罪深い粘膜 関節痛 神経痛 タバコが僕を断罪する (出演者— 体(てい)の良い憲法 銅像の陪審員 ウィンクと握手 ワイン庫は空) そして 君の手が触れる X線 事情通 牛の骨のベッドの上 それだけで僕は逝く 大嫌いなカエルのぬいぐるみ 塔を…

”transfer.”

君が窓の外を見ている そのうなじの美しさを君は知らない 北の森へと向かう列車の中で 私たちはお弁当を食べ 熱いお茶を飲んだ 空気は凛と澄み 黄土色した土が内に蓄えている命をモゴモゴと主張している 鬱蒼とした木の葉はガサガサと車体を擦り 「秋にもま…

”手招き”

暗闇にぼんやりと灰色のシルエット 波のように 動く (手をこまねく) (おいでおいでと) その軌跡は チューブから出したばかりの歯磨き粉 シャッターを開いたまま撮った深夜の高速道路 (おいでおいでと) (耳をくすぐる妖しい声) 血のように冷たいエナメルの床 …

”平行線のある景色”

まだ夏の残る波打ち際で 一人立ちすくむ ビーチサンダルを履いた足の甲を冷たい海水が時々覆い そのさざ波の途切れない繰り返しの中に永遠を思う 永遠など何一つないのに そんな存在を欲している 振り返ると ヤシの木の並ぶ国道が平行線 私はもうここに 私の…

”テレビの向こう”

プレゼントの食べ過ぎは体に悪いよ つぶつぶの皮をした果実 名前は知らない だらだらと長い心理描写と 一瞬の別れの組み合わせ テレビの向こう 欲望は誰にとってもリアルだと君は言ったけれど その時僕はもう寝ていた いや、死んでいた

”終末のざわめき”

攻撃下ーーー 「我々はxxxxxxx....」 そう、時は今だ 場所はここだ 意識下ーーー コントロールできないざわめき 繰り返し繰り返し 言い聞かせる おとなしい音楽 心を落ち着けて しかし真夏の太陽の下ーーー 揺らいだ ヘッドホンを外して 人混みの中 立ちすく…

”迷気圧”

遙か上空には灰色の渦巻き あっちにふらふら、こっちにふらふら したくない事と、されたくない事は微妙に違った おぼつかない足取り 頭上には迷気圧 〜めまい〜 羽毛布団で守られてる間に 外に積もったもやもやは75cmに達し 家の玄関を塞ぐ さて、人間開きな…

”夏の切り抜き”

私を追い抜いていく老人のタフネス 隆々と自転車で 坂道を 登っていく ガードレールの上に黒い塊 あの子が耳元で囁く 「知ってた?カラスは嘴まで黒いんだよ」 ほんとだ 怖い 目を潰されたらやだな、と なぜか思う 公園を二人して一周まわった 帰り道に落ち…

”コントロール、どうですか?”

ひん曲がった気持ちをまっすぐにして コントロール はやる気持ちをグッとこらえて コントロール コントロール コントロール その繰り返し その繰り返し 溢れ出した歪さが君を傷つけて 己を傷つけて 無視して 無視されて なかったことにされた生命は なかった…

”連なる”

猫が丸くなっている 昔の夢 意味なんて必要ない、でもすばらしい旅 音色は無限 無理やりこじ開けたドア 椅子に座るモデル 念じて待つ 胸の青い傷 一瞬のためらい

”触られる怖さ”

触らないで 口にした言葉 聞き取る耳 見つめる目 地面に着いた足 動いた軌跡 互いに影響し影響され個となるのか 触らないで 今まで他人に触られたことがないから 壊れるかもしれない 崩れるかもしれない

”息苦しいフィクション”

彼女は笑って繕った 震えていたのは、まだどこかが痛むからだ 外は雨が降っていて 新しい季節が来ると老人が独り言を言った 馬が一周する刺繍のセーター 地球は回転し 紅茶は冷め 彼女を置いていく 何も語りたくない 何も 言葉は連なりそれ相応の意味を作る …

”言う背中”

憔悴は灰に 倦怠は肺に どこに行っても 一点を見つめる瞳 何を言っても 死んだように動かない背中 青白い背中

”花束”

この世界中 ありとあらゆるものの中から きらきらとした言葉たちだけを集めて 君に届けよう (それはどんな花束よりもきっと素敵で⋯) ずっと続けていたら ずっと繋がっていられるかな? 不思議だね そんなことはないのに 人とは変わっていく生き物なのに 今…

”所詮は黒い夏の影”

沈黙を愛せよ 孤独に挑め 言葉で埋め尽くしたって 所詮は黒い夏の影 まばたきひとつで揺らめく炎 私は許されなかった子供 人の影を作るひとつの孤独という現象