Death & Honey

死と蜜、儚く甘く気だるい魔法

2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧

“そこにあるコーヒーとここにいることの証明”  

「存在するために生きているのです」とあの人は言ったね あの時 どう返事すればよかったのか 私にはわからなかった まだ幼かったのかもしれない 若すぎたのかもしれない 臨海工業地帯を望む防波堤の根っこであの人は車を停めた そんなムードが 全てを鈍くし…

”透明なため息”

透明な ハンドボール大のため息に 紙を貼って 色を塗って 形にして 見えるように そんなのが 足下にころがっている 蹴り上げたら 田んぼに落ちて 蛙が逃げた 家に帰ったら テレビを見よう 悪口や 醜いことばかりの 収録スタジオの床を転がるため息

”劇”

(平行線が織りなすスピード その残像に人は泣く) 君にとってこれは 十二色セット色鉛筆の 十三色目 余白潰しの喜劇 僕が手にするのは せいぜいパセリサイズのお情け つまづき しがみつき まとわりつき 螺旋状 ごめんね、 大事な裾が汚れてしまった ああ八等…

”道化の夜”

触れる ぶれる 並べて つまらない生活の残り滓(かす) 大げさに 言ってみせてよ 怪音が聞こえる なんだかあなたと波長が合わない そんな夜 他人とのつながりが 浮かび上がっては消える 今日はなんだか 調子が出ない ひび割れたノイズ混じりの音を出しながら…

”傷口から血”

山積みの宿題 遊び足りないのに 手のひらの切り傷は 君に触れてしまったから 砂粒がいろんな隙間に入り込んで ざらざらと気持ちが悪い 不快な事を訴えたら、それこそ一日話しても足りないだろう どこへ行っても 群れをなす人々ばかりで 頭痛がする 皆で楽し…

”痛み”

ねじ切れるような痛みの中で 少年はひざまづいた 息も絶え絶えに 蝿が飛ぶ その軌跡は 彼の残り少ない人生をたどる とここで鳴るはずのパイプオルガンは昨晩の火事で焼失していた 幼い彼の臓物は塩漬けにされ 牛頭の民族の市にて高値で売買されるだろう 誰も…

”まとわりついている”

まとわりつく まとわりつく したこと されたこと しなければならないこと いつも まとわりついてきて離れない 身軽になりたいのに このまま眠ってしまいたいのに いろんな色が混じりあって ねばねばしている 言葉、 行動、 友情、 愛情、 夢、 僕もそうやっ…

”抗菌された手段”

消えた地図 足下の亀裂 さまよう人々は 怒りを 統一された見解として ぶつけようとする 埋没した個 消えた殺意 埃っぽい生 洗浄済みの情欲 死んでしまった憎しみ 抗菌された手段によって 僕は殺された

”ばかの調べ”

ばかという言葉を 真っ赤な木の板に書きなぐって 君に渡そう その板は 君の手の中で揺れながら ばかの調べを奏でるだろう 君をこけにして 僕をこけにして 二人立ち尽くしたまま ばかの調べが空高く舞い上がっていくところを見ていよう

”見るのは罪な夢ばかり”

あなたの事を考えてるのに 夜ごと 見るのは罪な夢ばかり あなたにもっと触れたいのに 夜ごと 見るのは罪な夢ばかり もう眠るのはよそう 毎晩暑さにうなされている 冷房の効かないこの広い部屋 手くびを縛って 氷を齧って あなたの事をもっと知りたいのに 見…

”パノラマ”

◆◆◆◆ 切実な願いなんて聞きたく無いね 君自身の具体的な物語なんて聞きたくないね 体温が上がらない 挨拶をしなきゃいけないのに 何かを捕まえて封じ込めてるんだけど それが何かわからない 色のついた空気を眺めて 吸いたい色だけ吸ったら 私の瞳の色は真っ…

”めまいで暮れる”  

めまいがする コントロールできず 知らない存在 形が見えない 奏でて つなぎ目もなく 溶けたみたいな 嘘 日が暮れたら、 また別の僕だから 手が動いて 何かの形をかたどった

”ネックレス”

連なる約束 連なるドクロのネックレス 僕は二千年待った 持って行ってくれ 漂白済みの僕のドクロだ

”ただの石油”

捨てちゃった! ー魂なんてものは あげちゃった! ー自分なんてものは およそ愛情の理解なんて 巷のラヴ・ソングで事足りる 行進 希求 渇望 飢餓 涙も汗も血も 今はただの石油 僕のからっぽの皮膚だけが踊っている 行進行進 希求希求 渇望渇望 飢餓飢餓 僕が…

”鐘”

同じ形で繰り返す弦の響きが 撫でるように押し寄せる 自分を鼓舞したって せいぜい私にできるのは愛想笑いの余裕だけ 宝石の持つ醜さ 世間擦れしてゆく自分に嫌気が差す 眠気と共に押し寄せる死 鎮まらない怒り 静まらない騒音 目覚めと共に立ち上がる殺意 …

”夜空に向けてばらまいた”

どう思う? 鎖、嘘、不自由 夜空に向けてばらまいた 夏、溶けたバニラアイスに点々と落ちた血 ダルメシアンの模様 夜空に向けてばらまいた どう思う? 仮面、演技、自由 夜空に向けてばらまいた 朽ち果てた死骸 舞う埃 どこに行っても 追いかけてくる それは…

”名前のない時間”

全ての思考の道筋が 明確に見えるような気がする そんな時がある 細い煙のように形を成した後、すぐに消える閃き 宴の後の空っぽな時間… 人それぞれから放出された熱量を浴び この躰にまだわずかに残った異物が酔いを感じさせる 夜の大きな帯の中で とめどな…

”光を”

白い砂漠の真ん中で 僕はとうとう息絶えた 強く助けを求めても 冷たい遠くの鳥たち 光を 光を 光を 光を ドス黒い罪が染み着いた なげやりな僕の魂 大地に接吻をしながら 誰に許しを乞うているの? 光を 光を 愛を 光を

”消えていった”

消えていった どこへ? どこへだろう つかむ術もなく 見る術もなく 感じるだけが精一杯の… 消えていった どこへ? どこへだろう 涙は出るけれど、それは何のため? 叫んでしまうけれど、それは何のため? 消えていったものを惜しみながら 悲しみながら 歩い…

”蜥蜴”

その夜、 黒いゴミ捨て場で猫がけんかしてた 塾の帰り道 「もうすぐ、世界は終わる」といつものテレビ いつもと違うお母さん いつもと違うお父さん 甘すぎる紅茶 食べきれないハンバーグ 地面が濡れていて 何度もこけそうになった 泣いたかもしれない 塀に …

”撃つ用意(飢餓)”

夢ひもじい十代のさなか 狂ったように真実の果実にむさぼりついた 愛も言葉を話し始めたけれども 夢も愛も うつろなることでは同じ 砕いてやる! 気だるい夏のあなたの背中に 私の影が重なる *** 放浪者 殉教者のように乞食はふるまう 呪いと言葉は同義 …

”双子のバラード”

私の中で死んでいる この双子めを 如何しよう 可笑しいね 手首を切って 笑ったままでーーー 私が消えたらどうなるか 双子じゃなくて四つ子なの 四つ子じゃなくて八つ子なの いえ 八つ子じゃなくて十六子 無数に殖えて 無数に殖えて その最後に 一切合切消え…

”交換ゲーム”

交換しよう 君のその片方のピアスと 僕のこの歪んだロマンスを 君のその魅惑的な紙幣と 僕のこの疑惑的な使命を 交換しよう そうしよう 僕らはもつれあって ほどくことができないまま 終末の週末まで だからせめて 今は 交換ゲームを

“擬態”

変えられるものなら変えてみせろ その群れの中に 私はいる 見つけられるか あなたに 今夜はまだ帰りたくないのに 私ったら擬態したままだから このまま二人はこのまま はなればなれ くっついて はなれて さようなら 「バイバイ」 と手を振るあなたの手はもう…

”ジーン・セバーグ”

僕は知っている 毛布にくるまれた愛情を 君はずっと大事に持っていた 誰にも見せず 誰にも捧げず 君が毛布にくるまったまま冷たくなった朝も それは君と一緒にいた 君のために 君だけの

“消費され尽くした夜”  

ようやく手にした念願の黄金を 君は自慢げに舐める このレトロに気取った宮殿の宴の中で 君は誰にも相容れない星 酒は渇きを癒すけれど 歴史を良い方には導かなかった その湿ったように光る黒髪が 僕に悩ましい罪の感情を起こさせる この夜の風は どこまで続…

”光っているよ”

⋯怖がることはないよ このお話は暗闇と孤独から始まるんだ⋯ 焦げた肺に巣食う言葉達を掬(すく)い救う 少し離れて見てごらん、 光っているよ 揺れる触れる振れる君は未来 光っているよ

”秘密”

丸まって くるまって そうやって また朝が来る ホントのことは言えないまま 増えてく 増えてく あふれ出しそう ほら ホントのことは言えないまま 消えてく 消えてく こぼれ出しそう 丸まったその肌を 伝いながら 言えないまま 言えないまま

”生贄”

死んでしまえと悪態をつく 狂ってしまった己に 生き急いでいる 残り時間はあとどれくらいだろう がんじがらめ すり抜けていきたいのに そうはなかなかさせてくれない 天空を仰ぎ 視線を探す そこには何もなく 気配だけがした 神への挑戦 私は生贄じゃない

”明日は”

苦しみ 言葉 還元して 換気して このままじゃあ このままだよ 厳しさ 生きていくということ 変換して 場面、転換して このままじゃあ このままのままだよ あと一歩 あと1センチ 近づければ 明日は ねえ