Death & Honey

死と蜜、儚く甘く気だるい魔法

”お気に入りのマグカップで”

絵文字顔文字

エゴエゴエゴ

積もり積もって

ハイ、サヨナラ

バハハイってもんだ

 

美しいものが見たくて生きているのに

 

じゃれあってどいつも

馴れ合ってこいつも

ハイ、サヨナラっていつも

バハハイってもんよ

 

ずっと居場所を探しているけれど

それ自体、間違いだったのかもしれないね

 

天気のお話、株のお話、恋のお話、世間話

全くもって胸焼けがする

 

君はいつもこらえてたね

隠れてトイレで吐いて

 

そのまま

ありのままでいてね

ありのままで

 

今までついてきた嘘で体を縛って

 

戸棚の中はお気に入りのマグカップでいっぱい

マグカップにプリントされたのどかな動物たちが

もう君の愚痴にはうんざりしてるみたい

その証拠に戸棚は今にも噴火しそうな表情だ

 

 

 

”エクスクラメーション、ベイビー”

ーーーだって

びっくり!

世の中

いろいろあるよね

 

ーーーだって

がっかり!

君だって

いろいろあるよね

 

そんな繰り返しを忘れて⋯

 

目を閉じてごらん

一瞬の暗闇

目を開けてごらん

永遠とも思える光

びっくり!

黒々と

道は続き

駱駝色した

木々はうねり

黄色い羽の

蝶々が飛ぶ

雲は一つ二つあるな

青い空

そんな夏の昼間

幼い心をまだ湛(たた)えた君はこの世界を歩く

 

びっくり!

だって

世界は驚きでいっぱいだ!!!

 

 

 

”それは”

キラキラと降り積もるそれは

頑張ったって伝わらないそれは

愛しただけじゃ敵わないそれは

地球を回しているそれは

 

全部受け止めて

抱きしめてやる

全部受け入れて

慈しんでやる

 

ふつふつと湧き起こるこれは

走ったって追いつけないそれは

憎んだだけじゃあ切り離せないそれは

月を引っ張ってるそれは

 

全部解き放って

生み出してやる

全部捨て去って

悲しんでやる

 

苦しみの履歴

治らない傷跡

泣いて泣いて赤く腫れてしまったこの両眼が見るそれは

 

笑って生きてる

そんなふりをして

 

 

”異邦人の砂”

めり込む足

歴史は飯ごうの裏で焦げ付いた

お札(さつ)一枚で

拡張され得る感受性

 

等間隔の息遣いと

変えられない名前が

採点されようと

裁きの門の前に列をなす

 

この街で

いつまでも異邦人風情を漂わせたまま私は

夜の街灯のいくつかにタッチした

 

 

 

 

”スイミングプールは空虚”

挙げ句の果てに挙動不審

イカれちまったこの神経じゃ

この夏を乗り切れるかどうか、だ

 

スイミングプールは空虚

「おかしいね」って二人して笑えたら

 

シャッター街が垣間見せるアフターアワーズのから騒ぎ

黄ばんだネオンのトンネルに響くかつての賑わい

仕事帰りに缶ビールを一気飲み 

イカれちまったこの神経じゃ

この夏を乗り切れるかどうか、だ

 

君はどこ行っちゃったんだよ

消火栓がひとりぼっち

容赦ない日差しが生み出す黒い影と白い地面にクラッときたら

 

スイミングプールは空虚

「おかしいね」って笑いに相反する虚ろな水面

飛び込んで

二人して戯れよう

 

 

”当たり前のように今日は”

当たり前のように今日は始まらなかった

いつもどん底で

毎日最低値を更新している

死んだままの心

乾いた熱帯雨林

電柱の陰の生き物と目が合って

「殺される」と実感する

ここらには碌なやつがいない

碌な事件がない

冷たい小雨をかぶりながら

今日も罪深い仕事に従事する

 

雲の向こうには天使がいて

いつか俺を慰めてくれるだろうか

今は見上げても

ぬめっとした鉛色の空しか見えないけれど