"あなたの名前をつぶやくたびに"
あなたの名前をつぶやくたびにぽろりとこぼれるものがある
なんて素敵なことでしょう
それはもう魔法みたいに
空気弾んで
風船喜んで
眠りにつく前
ほんの少しだけ小さく声に出して君の名前を呼んでみる
呼ぶって不思議
届きやしないのに
どんな大声で呼んだって叫んだって
きっと
届きやしないのに
でも呼んでみると、少し素敵で
少し幸せになる
あなたの名前をつぶやくたびにぽろりとこぼれるものがある
それは魔法
それは呪文
人生のかたちを変えていく甘い甘い呪い
誰にも言わないから、この秘密だけはどうか許してよ、神様
”金魚鉢の中の二人”
「それ以上は聞かないで」
込められた断絶の意
言えない金魚鉢の秘密
抱えたままのあなた
今にも向こうの出窓くぐって
飛び降りそう
これ以上踏み込めない
もっと知りたいのに
もっと聞きたいのに
その紅い唇からささやき漏れた言葉
「それ以上は聞かないで」
優しさ?
でも硬い硬い優しさ⋯
一瞬
喉の奥が強く揺さぶられ、脳が鈍く殴られて
苦しさが手足を伝っていく
息ができない
呼吸を取り戻さなきゃ
ああ
息の仕方を忘れてしまった
愛の仕方を忘れてしまった
水は冷たく厳しい 金魚鉢の中