Death & Honey

死と蜜、儚く甘く気だるい魔法

”かりそめの恋心”

さようなら!かりそめの恋心よ!

僕は崖から飛び降りるだろう

そんな夢を見るだろう

泡のような夢を見るだろう

くだらない夢を見るだろう

 

少ない言葉と

少ない色と

少ない線だけの

額に入った

君を好きになった

 

泡のように消えるだろう

崖から飛び降りるだろう

嫉妬で身をよじらせながら

炭酸みたいに砕け散るのだろう

散り散りになるのだろう

無意味な思慕に魂を捧げた

嗚呼哀れな青春よ

哀れな思慕よ

ガラス窓のように馬鹿げていて

消火栓のように愛おしい

灯台のようにおかしくって

黒い、大きなピアノのように図々しい

誰が馬鹿にできようか

(馬鹿にできるのは僕だけだ)

さようなら!かりそめの恋心よ!

 

 

”神聖なる禁猟区”

ここは禁猟区

神聖なる領域

誰にも穢されることはない

醜さも、美しさも紙一重

奇跡は太陽に近く

後悔は月に優しく添い遂げる

 

どこからか穏やかな風が吹き

狩人は世界を支配する空砲を放つ

ひしめき合う薔薇が生き辛い人たちを守り

存在の理由なんて忘れさせる

 

穢れた言葉を投げるな

ここでは、それ相応の罰があると心得よ

閃きはそのまま実行に移せ

ここでは、夢中になれたらそれで全て

 

鳥たちのさえずりと果てが無い森

硬い剥き出しの土、優しい芝

大きな葉や花たち実たち

 

誰も知らない、誰にも見えない己がここにある

神聖なる禁猟区

魂の救いになるのであれば、いつでもここに来ると良い

 

 

 

 

 

 

 

”冷たい瞳は誰のもの?”

軋み

放つ

白んだ嘘の切れ味に酔いしれな

 

壁は灰色

石の沈黙

弦のたわみ

そのきらめき

響き

 

風邪ひいちゃったかな

声がザラザラ

 

冷たい瞳は何も語らない

何も語らない

何も見ていないのだから当然

足を投げ出し壁にもたれてかかっている置き人形

 

ハハ

厳しいね

悪態の一つでも吐けば? スーパーマンさん

 

 

 

 

 

 

”一瞬”

愛したのは一瞬で

憎んだのは一瞬で

殺したのは一瞬

 

息を止めて

目は開けたまま

その人は頷いた

 

こびりつく錆のような

友情に

愛情に

思いやりに

嫌気が差して

 

最後はエナメルの息一つ

 

 

 

 

 

”鐘の音”

そうね

切り離して

人生とそれ以外を

 

視野には入らない笑顔がたくさんあって

人混みの出す騒音にかき消された笑い声がたくさんあって

雪の下には気づかないまま通り過ぎてしまった奇跡がいくつもあって

 

世俗に別れを告げる鐘の音が聞こえます

軽く明るく

飄々と

行く人もあり

逝く人もあり

生く人もあり

 

 

"あなたの名前をつぶやくたびに"

あなたの名前をつぶやくたびにぽろりとこぼれるものがある

なんて素敵なことでしょう

それはもう魔法みたいに

空気弾んで

風船喜んで

 

眠りにつく前

ほんの少しだけ小さく声に出して君の名前を呼んでみる

呼ぶって不思議

届きやしないのに

どんな大声で呼んだって叫んだって

きっと

届きやしないのに

 

でも呼んでみると、少し素敵で

少し幸せになる

 

あなたの名前をつぶやくたびにぽろりとこぼれるものがある

それは魔法

それは呪文

人生のかたちを変えていく甘い甘い呪い

誰にも言わないから、この秘密だけはどうか許してよ、神様

 

 

”水晶越しに”

もう許されはしないぞ

苦しみの他には

 

もう後はないぞ

苦しみの他には

 

痛みの宮殿で

水晶越しに見る別世界

それは綺麗な綺麗な世界

私のいない新世界

 

もう戻れはしないぞ

私は罪人

生れながらの罪人