Death & Honey

死と蜜、儚く甘く気だるい魔法

2017-01-01から1年間の記事一覧

”一瞬”

愛したのは一瞬で 憎んだのは一瞬で 殺したのは一瞬 息を止めて 目は開けたまま その人は頷いた こびりつく錆のような 友情に 愛情に 思いやりに 嫌気が差して 最後はエナメルの息一つ

”鐘の音”

そうね 切り離して 人生とそれ以外を 視野には入らない笑顔がたくさんあって 人混みの出す騒音にかき消された笑い声がたくさんあって 雪の下には気づかないまま通り過ぎてしまった奇跡がいくつもあって 世俗に別れを告げる鐘の音が聞こえます 軽く明るく 飄…

"あなたの名前をつぶやくたびに"

あなたの名前をつぶやくたびにぽろりとこぼれるものがある なんて素敵なことでしょう それはもう魔法みたいに 空気弾んで 風船喜んで 眠りにつく前 ほんの少しだけ小さく声に出して君の名前を呼んでみる 呼ぶって不思議 届きやしないのに どんな大声で呼んだ…

”水晶越しに”

もう許されはしないぞ 苦しみの他には もう後はないぞ 苦しみの他には 痛みの宮殿で 水晶越しに見る別世界 それは綺麗な綺麗な世界 私のいない新世界 もう戻れはしないぞ 私は罪人 生れながらの罪人

”黒いパンタグラフ”

仮面遊戯 振る舞う汎社会性 強行採決セレモニィ そして飛び散るー 光 燦々と やがて日は暮れ プラットホームで ぼーっとしたりなんかして 瞬間 嘲る この感情を 仮面たちを また取り戻して 気を取り直して 次の電車に乗ろう 冷たく黒いパンタグラフ

”光速”

閃死のフラッシュ ドットの青春が分解 悶喜のクラッシュ 急カーブで冷や汗 選択の余地 光速 同時に拘束 気づかないまま ハンドルを握る 潤滑油を刺されていたのはマシンじゃなく僕 選択の予知 しがみつくのは 親と先祖と神様と宿題 愛想笑い 致命的な癒し 有…

”Y字路に立って”

右手には煙草のにおいが染みついて 脳にはさっき吸った煙が充満している 男は立ち止まる ぼんやり考える 蒙昧とした視界 Y字路の向こう 駱駝色のコートに包まれた躰にゆっくり静電気が溜まる 遠く 山の向こうに毛むくじゃらの巨人を見た 悲しい歌を歌ってい…

”金魚鉢の中の二人”

「それ以上は聞かないで」 込められた断絶の意 言えない金魚鉢の秘密 抱えたままのあなた 今にも向こうの出窓くぐって 飛び降りそう これ以上踏み込めない もっと知りたいのに もっと聞きたいのに その紅い唇からささやき漏れた言葉 「それ以上は聞かないで…

”極北のトルソー”

時間の隙間 呼吸の間隔 喪失を告げる極北のトルソー 空回ったっていいよ 見届けてあげるから 氷づけの人生 かすかな摩擦 予感 未完成な生 暗闇の中 必死に掴もうとしている 空回ったっていいよ 見届けてあげるから キスは罠 甘美な毒

”脱皮”

朝焼けが海沿いの道のアスファルトに作ったこのやせ細った影 頼りなく、危うく 冴えない色をした車たちが長い間隔をあけて車道を西へ東へ どこまでも続いているように見え いつだって引きずってるよ 昨日の続きを 去年の続きを あの日の続きを あの瞬間の続…

”ねむけ”

眠気は理路整然 目を閉じながら 陽炎 都合の良い昨日の言葉は 明日には通用しない 真夜中の境界線上 木造の船が静脈を突き進む

”ある画家の証”

記録されていた 生きた証は 白いスケッチブックに鉛筆で 定着された黒鉛の線 その線の佇まいが放つ生命力の ああ、なんともか細くも力強い放出 眩しいほどでもなく 暗くて見えないほどでもなく しかし確実に「俺はここに居たんだぞ」と 何冊にも及ぶスケッチ…

”影と陰を”

全てを満遍なく照らす必要はない 程よく影と陰を

"生まれて一番の夏"

水を蹴って 寝袋 ジャズドラム 17の 生まれて一番の夏は 天の河を見つめながら 安いビールに手を出したりして その苦さが喉に焼きつく ねえ、「おいで」って言ってよ すぐに飛んでくから 僕は君のお誘い待ちさ 白いウミネコの群れ 夏期講習の帰りのけだるい…

”白い馬と走る”

白い馬の胴を撫でた かたくも滑らかな毛 奥で筋肉や血管や心臓がうごめいている そんな気配を感じる 生きているということはこんなにも不気味で、不思議なのか 私は鞍にまたがり 小一時間、コースを走った (これはわたしがはしっているのとおなじ⋯) そう、お…

”銀河中が”

温もりを そっと ゆっくりと 熱交換でしかないのに 不思議だな 錯覚して 眠りへ落ちてく 夜がキラキラと泣いているよ 相手をしてあげて 星たちがたくさん 列を作ってあなたの話を待っている 銀河中があなたの話を待っている 銀河中が期待してる