Death & Honey

死と蜜、儚く甘く気だるい魔法

”言葉摘み”

飛び込んで

蒼い言葉の湖

潜る

深く深く

どこまでいけるのか

 

紫の珊瑚、知らんぷりしている岩、「無」を縞模様にしたためた魚たち

かき分けて

かき分けて

あんな言葉

こんな言葉

見たことのないような言葉まで

触ったことのない言葉まで

こわごわ

たくさん

あるけれど

 

今日はこれと、これを摘んで持って帰ろう

君へと届けます

 

 

 

”在る”

吸い込んで

吐く

 

続くことだらけ

終わることといえば

今日という一日か

 

揺れて

流れて

拡大して

縮小する

 

自分を固定しなくなってから

とても安心できる

とても不安になる

大きさも形も色も

自由自在

 

私は光りたい

砕かれたガラスの粒

その一つ一つ

 

不安は言葉と曖昧なそれ以外

希望は言葉と曖昧なそれ以外

 

ただ、

在る

 

 

 

 

”混沌を選べ”

静寂に包まれ

混沌を選べ

 

轟音に耐えられない哺乳類たちは

そこで息絶えた

 

大きな骸たちが灰色の浅い沼地にどっしりと横たわっている

 

静寂に包まれ

混沌を選べ

音の壁に絶望させてよ

色のついた夢を見せておくれよ

 

骸たちの上 スキップして超えて

沼地の向こう側

何があるのか

気になるけれど

今はまだこの遠浅な沼地の枯れた木々が頬杖ついて吐き出す混沌に浸っていたい

 

 

 

 

”なんて喜劇的な涙”

いやはや

インプット過多

さてさて

アウトプット過多

こんな調子だから

 

雲上にある白金のピアノを調律して

あなたは

「愛してる」

そのメロディを奏でる

ああ、なんて茶番

こんな調子だから

 

街行く私はドロドロバスや

にがにが電車に詰められて

車掌の合図と同時に無理心中

 

箔押しされた通信機器は

憎悪や不満や否定を増長し

断末魔

勢いよく

根っこを張って

膨らんでいる

 

ああ、なんて残酷で喜劇的な涙なのでしょう

 

 

 

”沈鬱のディナー”

分解

骨組み

欠片

空間

 

何も

知らない

何も

言わない

沈鬱のディナー

神様

 

走る

騒ぐ

光る

血が出る

時代の兆候は

君の額の真ん中の風穴

 

何を信じようが

何を壊そうが

知ったこっちゃ無い

 

歪んだ

僕は

優しさを忘れて

殴られた

 

分解

潜る

君は

悪魔

僕の

死神

何も

言わないで

時が来たんだ

 

沈鬱のディナー

神様

 

外はいい天気だよ

僕を放っておいておくれ

 

 

 

“気配だけが残る”

無音

重さが消え

軽さが消え

呼吸の音が告げる空間の広さ

その一方で雑音

つまり若さのかけら

くだらないやり方の広告をすり抜けて

生きたいと

死にたいが

同時

眠る直前の

淡い光

今にも消えそうな私

気配だけが残る

予感だけが頼り

切り立った崖の上

 

そんな際々のところで

あなたを愛した

輪郭だけの

あなたを愛した